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「混沌」(10月最新アニメSS詰め合わせ)

はぁい!でんき部の、愛用の靴下は五本指ソックスの方、つむぎ日向です!主宰兼小説担当です。

そんなわけで、なんと早いもので今年ももう10月。
新アニメも今日から徐々に始まっていきますね!

そこで今回は、10月から始まる最新アニメで二次小説をいくつか書かせて頂きました!
なんと舞台はあの「アーネンエルベ」。

一応繋がって一つの話ですが、一本一本でも楽しめる内容になっていると思いますので、元ネタを知っている作品だけでも読んでいただけたら嬉しいで。

では、元ネタ紹介。

† カウンター:「working!!」+桂木千鍵&日々乃ひびき †

† 1番テーブル:「Fate」衛宮士郎・セイバー陣営 †

† 2番テーブル:「ペルソナ4」自称特別捜査隊 †

† 3番テーブル:「僕は友達が少ない」隣人部 †

† おまけ:かるた部? †


こちらが本日のメニューになっております。

ちなみに、全作品メタな内容になっていますので、ご承知の上でお読みくださいませ。

それでは、それぞれの作品を楽しんで頂ければ嬉しく思います!

感想、(pixivでは)アンケートへの回答などもお待ちしています。
どうぞよしなに。

ではでは、最新アニメを楽しみましょう!
ノシ

by前期1はツインエンジェルだと本気で語る、つむぎ日向





混沌


 それはとある喫茶店の話。
 時に違う空間をも繋ぐその店には、ありとあらゆる人々が何かに惹かれるように足を運んでいた。
 そしてこの日もまた、本来ならば出会うはずのない奇妙な邂逅がその店ではいくつも起こった。本人たちは決して知ることもないだろうその邂逅は、直接の出会いではなく、その店の中で起こる。さしずめ、その店内の空間は混沌(カオス)と言うべきであろう。
 まるで魔術にでもかけられたが如く、思いの淵を打ち明けてしまいたくなる店。その店の看板にはこう名が記してある――アーネンエルベと。


†カウンタートーク(1)†

「ごめん、遅れちゃった!」
 アーネンエルベの店員、桂木千鍵はエプロンを腰に巻きながら慌ててカウンターに入った。まさかこんな日に日直を任せられるなんてと、放課後何度ぶつくさ文句を言ったことだろうか。
「あっ、チカちゃん!だいじょうぶだよ」
 息を切らせて入ってきた千鍵に、既にカウンターに入っていた同店員、日比乃ひびきは満面の笑顔でそう答える。その笑顔に千鍵は癒されつつも、
「そっか?でも、今日他のバイトの人いないしさ」
 と、ウェイター姿の兄貴と呼ばれる、頼れる不審人物の顔を思い出していた。
「まったく。今日は忙しくなりそうだってのに」
 そう千鍵が思うのも、今日は十月一日。なぜかこの店は、こういう“なにかが始まる時”には忙しくなるのだ。
「だいじょうぶだよ。ほら、店長の知り合いがマネージャーをしてるファミレスから、ウェイトレスさんたちが来てくれたから!」
「ウェイトレス?」
 ひびきの言葉に疑問を持ちながらも千鍵は店の入り口を見やる。すると、ちょうど店のドアが開いて、カランカランとドアについたベルを鳴らしながら見知った顔が入ってきた。
「いらっしゃいませ!」
「っ!?」
 入ってきた黒スーツに身を包んだ金髪の女性は、その声に一瞬戸惑うと、視線をカウンターにいた千鍵とひびきに向けた。
「失礼しました。一瞬地の底から声がした気がしたのですが、気のせいだったようです」
「いや、あたしじゃないぞ」
「わたしも言ってないよ?」
「うん?」
 店員のどちらもいらっしゃいませという言葉を発しないのもどうかと思うが、確かにその声を聞いた男装の麗人は疑問を顔に出す。すると、
「こっちです!」
 と、またも地の底からそんな声が聞こえた。その声にアホ毛を揺らしながら下を向く。千鍵とひびきも同じように彼女が見た方を見ると、
「小っちゃっ!」
 そこにいた一人のポニテ少女を見てそう千鍵がツッコんだ。
「小っちゃくないよ!」
 千鍵の言葉にそう返す小っちゃいウェイトレスの格好をした少女。
「この店は、サーヴァントどころか小学生まで働かすのか?」
「小学生じゃないよ!高校生です!」
 目を尖らせて聞く麗人にも臆せずそう答える少女は、だがどうみても小学生くらいに見えた。
「でも、胸だけは一番だよねー」
「「…………」」
 ひびきの言葉に千鍵も麗人も言葉をなくす。
「えっと……音尾さんに頼まれて、今日一日ここでお手伝いをさせてもらう種島ぽぷらです!よろしくお願いしますね!」
 小っちゃい少女、ぽぷらはそう言って頭を下げた。
「ああ、よろしく……」
 なんだか寂しい思いを抱えながら、千鍵はそう返し、
「では私は席に……」
 と、麗人は冴えない青年が座っている窓側の席に歩いて行った。
「今の人、カッコいい人ですね」
「うん!うちの常連さんで、セイバーさんっていうんだよ!」
「でも、なんかいつもの格好と違ったなー……それよりさ……」
 千鍵は改めてぽぷらのことを見る。
「臨時バイトって一人だけか?」
「ううん、もう一人いるって聞いてるけど」
「えっと、その子ならもうすぐ来ると思うので……ただちょっと、いろいろと大変な子なので」
「うん?……まあ、別に問題起こさなきゃいいよ。それに、この店にくる客なんて、とんでもないことしない限りは問題にもならないから」
 煮え切らない言葉に疑問を感じつつも、よく分からないことには首を突っ込まないのが安全策だと知っている千鍵は、ある意味達観してそう言った。それがこの店で働きながら、唯一彼女が学んだことだった。
 触らぬ神に祟りなしどころか、本気を出したら神様すら殺しそうなお客たちを相手にしてきた賜物である。
「それにしても店長の知り合いってのは、やっぱアッチ関係なのかな?」
「きっとそうだろうねー」
「……?」
 可愛らしく首を傾げるぽぷらに構わず、千鍵とひびきは同じ渋い声を頭に浮かべていた。
「まっ、今日も何事もなく終わってくれれば、わたしはそれでいいや」
 千鍵はそう呟くと、自分の仕事にとりかかるのだった。



†1番テーブル:衛宮士郎・セイバー陣営†

「はぁ~……」
 窓際のいつもの席に座っていた衛宮士郎は、ゆらりと湯気を上げるコーヒーを見つめながら、そう深く溜息をついた。こうしているのも、もう何時間になるだろうか。
「シロウ、やはりここに居ましたか」
「なんだセイバーか……」
 そんな士郎にふと声がかけられ、その声がした方を士郎が見上げると、凛とした金髪の美しい麗人が立っていた。士郎のサーヴァント、セイバーだ。ちなみに、サーヴァントの説明は割愛する。
「なんだとは失礼ですね。家にいなかったので探していたというのに」
「なにか用か?」
「え、ええ……」
 なぜかやさぐれている士郎に気圧されながらも、セイバーはその場で両手を広げて自らの姿を士郎に見せた。
「ど、どうですか、シロウ?」
「なにがだ?」
「ですから、この格好です」
 セイバーのその格好は、いつもの私服ではなく漆黒のシーツに身を包んでいた。
「あー……似合ってると思うよ。セイバーの凛々しさがよく出てるしさ。うん、カッコいい」
「そうですか……?その、どうしたのですか?今日のシロウは、貴方らしくありませんが」
 いつもの士郎ならば、笑顔で似合っていると言って終わりそうなものを、今日は気のないような顔をしながらも、しっかりと格好を褒めた。やはり今目の前にいる士郎は、セイバーの知っている士郎とはどこか様子が違っていた。
 セイバーの言葉を聞いて士郎は、どこか憂鬱そうにしながら、
「なんでもないよ……」
 と、言いながら、あきらかに追及して欲しそうな潤んだ目をセイバーに向けていた。
 セイバーは少しばかり面倒だなと思いながらも、意を決して士郎の前の席に腰を下ろした。
「そんなことはありません。シロウ、貴方は私のマスターです。サーヴァントとマスターは一心同体。なにか悩みがあるなら話して下さい。私に力になれることとは限りませんが、話すことで少しは楽にもなるはずです」
「ありがとう、セイバー……じゃあ、……」
 士郎はそう言うと、自らの悩みをセイバーに打ち明けた。
「俺って、本当に主人公なのかな?」
「はっ?」
 並大抵の悩みならば、真剣に聞いて自分なりのなにかを言ってあげられる自信があったセイバーだったが、つい目を点にして聞き返してしまった。士郎の放った言葉があまりにも難解で、聞き解けなかったのだ。
「だからさ、俺、Fateの主人公なのに、最近影薄いなーって……」
「えっと、それは厳密にはどういう……?」
「エクストラ……俺に一切声かからなかったからさ……」
「それは私だって同じです!また同じ顔が「レリーズ!」しただけですし、それにほら、次回作はわからないじゃないですか!」
「そうかな……」
「そうです!」
「そう……だよな」
 ふぅと息を吐くセイバー。
 これで本来の士郎に戻ってくれると思ったのだが、それはセイバーが甘かったようだ。むしろ、ここからが士郎の本題だったように話を続ける。
「でもさ、Zeroでも出番少ないし……きっとのんたん的には出番Zeroだし……」
「なっ、それは……」
 今度は自分も出ていないからなどという言い訳はセイバーには使えなかった。なにしろ、今セイバーはZeroの衣装で士郎の目の前にいるのだ。
「そりゃ俺だって、親父の話を見れるのは嬉しいっていうか、ずっと気になってたし……でも、これでアニメに人気が出たら、「衛宮士郎?いたっけ、そんな奴?」とか言われるんだ……」
「そ、そんなことはないでしょう!」
 騎士王に有るまじき、「めんどくせー!」という思いを抱えたまま、セイバーは自らの“今”のマスターに声をかける。
「あなたは仮にも、stay nightの主人公なんですよ!」
「でも死ぬじゃん」
「死ぬ主人公がいてもいいではありませんか!それに、なんであれ貴方は私のかけがえのないマスター。それに変わりはありません」
「セイバー……」
 士郎の潤んだ瞳がセイバーを見つめる。が、
「でも、きっと親父の方がいいマスターだったんだろうな……」
「え?」
「だって、今日だって放送日だからって、そんなに嬉しそうにそのスーツ着てさ……」
「いや、それは……」
 士郎の目にどう映ったかは置いておくとして、正直、いい思い出などまともにあっただろうか……?そもそも、あれはいいマスターだっただろうか。
「否。私は貴方のサーヴァント。最初こそなんたるマスターに呼ばれたものかと思いましたが、今思えば貴方で良かった。心からそう思えます。ですから安心して下さい、衛宮士郎は列記としたFateの主人公なのだと」
「そうかな……」
「ええ。もしそれに文句を言う輩がいるのであれば、誰であれ私がエクスカリバーの錆にします。ですから、貴方は胸を張っていればいいのです」
「そっか……ありがとう、セイバー……だけど、すぐに暴力沙汰は駄目だからな」
「はい、我がマスター」
 そう言ってセイバーは頭を下げる。
 どうやら、なんとかいつもの士郎に戻ったようだった。
「そうだよな。なに小っちゃいことで悩んでたんだろうな、俺」
「そうです。それにZeroで出番のない者なら、他にも大勢います」
「それもそうか。じゃあ、俺はまだ幸せな方だな」
「ええ、ですから安心して登場を待っていて下さい。きっとショタコン歓喜です」
「……なぁセイバー、おまえのその言葉、どこで覚えたんだ?」
「店の前に落ちていた青い携帯電話がそう」
 士郎はその言葉を聞いて、頭を抱えながらセイバーに聞く。
「で、その携帯どうした?」
「不気味な魔力を放っていたので、踏みつけておきましたが問題ありましたか?」
「いや、よくやった!」
 ただ、五分の確率で喜んでるだろうなと思いながらも、士郎はいつもの笑顔を取り戻していた。
「よし、じゃあ帰るか」
「もうですか?私はまだなにも食べていませんが」
「心配するなよ。今日は帰ったら、特性の赤飯に豪華なケーキまで食わせてやる。他にも、ご馳走がいくつも待ってるぞ。全部アーチャーが作るんだけど」
「おお、それは楽しみです!……ちなみに、弓兵とは赤い方ですよね?」
「金の方は料理できないだろ。でも、皆呼んで一緒に食べようぜ。その後、そのままZeroの放送を見よう。きっとその方が楽しいしさ」
「それもそうですね。では帰りましょうか」
「ああ……早く帰って、ロリ凛とロリ桜を楽しみに待たないとな」
「シロウ……」
「いや、冗談だよ……あの、会計……」
 士郎が気まずそうに席を立ってそうカウンターの方に言うと、見なれないオレンジ色の髪をしたショートカットの女の子がオドオドしながらやってきた。いつものアホ毛の元気な子もオレンジ色でショートだが、その子とはどう見ても違う子だ。
「えっと……コーヒー一杯ですね……?」
「はい」
「ちなみにシロウ、どうでもいいのですが、おかわりは何度したのですか?」
「ん?えっと、十二回かな?」
「バーサーカー!?……という以前に、貴方はいったい何時間ここにいたんですか……?」
 セイバーが呆れてジト目で睨む中、士郎は笑ってごまかしながら、財布から小銭を出した。それをウェイトレスに手渡そうと手を伸ばすと、
「お、男の人やっぱり無理!」
 と、叫んでウェイトレスが、小銭を受け取りに行った右手で見事な右ストレートを士郎に決めた。
「す、すいません!!」
 席に崩れ落ちる士郎に頭を下げ、そのウェイトレスは落ちた小銭を回収してカウンターに駆け戻った。
「だ、大丈夫ですかシロウ?」
 あまりの突然のことに、セイバーですら反応できずにいた。
「あ、ああ……一瞬親父が見えたよ……」
「気を確かに!まだ放送時間ではありませんよ!」
 気が遠のく士郎は、わずかに残った意識の中、「あぁ……スーツのセイバーもいいなー」などと思いながら眠りについたのだった。



†カウンタートーク(2):男性恐怖症†

「おい、あいつ今衛宮さん殴ったぞ……しかも五輪狙えそうな綺麗な右で」
「うん!しずちゃんも真っ青の綺麗な右だったね!」
 千鍵とひびきは、カウンターの中から窓際の席で行われた殺傷事件をそう傍観していた。
 セイバーが来店してから少ししてカウンターに入った彼女は、実に真面目そうで普通の女の子だったのだが、とんでもない物をもった少女だったようだ。
「すみません!私男性恐怖症で、男の人を見るとすぐ殴っちゃうんです!」
 カウンターに戻ってきたその少女、伊波まひるはそう言って頭を下げた。
「いや、あたしらに頭下げられてもな……」
「でも、衛宮さんは頑丈さだけが取り柄みたいな人だから大丈夫だよ!」
「それはそれで酷い言われようだな、あの人……でもまあ、最悪死んでも、これから始まるZeroには影響ないし大丈夫じゃないか?」
「えっと、そうですか……?」
 まひるはなんだかしっくりこない思いを抱えたまま問い返した。
「ああ。むしろ、この店に来る奴らはあれくらいじゃ死なないから心配しなくていいよ」
「はぁ……その、ありがとうございます……」
 千鍵が冗談めかして言っているようなので、きっと自分を慰めるためにそう言ってくれたんだと思いながらまひるはお礼を言った。

 そんなふうにカウンターで店員たちが楽しくおしゃべりをする間にも、他のテーブルではまた違う思いが放たれていた。



†2番テーブル:自称特別捜査隊†

「こんなところに喫茶店なんかあったんだな?」
 花村陽介は椅子に背中を預けながらそう呟いた。
「そうね。ずっとこの街で暮らしていても、知らないことってあるのね」
「だねー。でもまあ、あたしは肉食べれればいいや!」
 陽介の言葉に、天城雪子と里中千枝がそう続く。
「って、こんな喫茶店で肉はねぇだろ!……でも、なんか辛味はありそうだな……」
「えー、そうかなー?」
「そうだよ……とりあえず、コーヒー四つでいいな?」
 陽介はテーブルを囲む自分の他三人に確認を取って、ウェイトレスに注文する。
「今のウェイトレスさん、小さくて可愛かったね?」
「だね!小学生なのにお店のお手伝いしてるって偉すぎ!」
 雪子と千枝が注文をとりにきた小っちゃい女の子の話題で楽しそうに話すのを聞き終えてから、
「それよか、もうすぐ始まるわけだけど……」
 と、陽介は切り出した。
「始まるってなにさ?」
「だから、俺たちのアニメだよ」
「そっか、もうすぐだもんね」
「おう!だからさ、放送日はジュネスの家電売り場特別に開けてもらって、みんなであのテレビで見ようかなって思ってんだけど、どうかな?」
「おお!いいね、それ!花村のくせに名案じゃん!」
「くせにってなんだよ、オイ……」
「でも、それだと菜々子ちゃんは無理だよね。夜も遅い時間だし……」
 陽介の言葉を無視して雪子がそう言う。
 確かに放送時間は深夜。小学生の女の子を出歩かせるには遅すぎる時間だ。なにより、菜々子の父がそれを許さないだろう。
「ほらそこはさ、俺ら特別捜査隊だけってことで。そうじゃないと、あのテレビで見る意味もわかんなくなっちまうしさ」
「それもそうね。じゃあ、そうしよっか」
「よし!じゃあ、決まりだな!」
「そうだ!じゃあ、お菓子とかもみんなで持ち寄ろうか!」
「それなら心配するな!うちのフードコートから好きなの持ってっていいってよ!」
「マジで!?ジュネス太っ腹ぁ!」
「そうだろ、そうだろ」
 そんな話をしているとコーヒーも届けられ、四人は一息ついた。
「ところで、おまえもなんか喋れよ相棒」
 コーヒーカップをゆっくりテーブルに起きながら陽介がそう隣に座る青年に声をかけた。
「え?俺、喋っていいの?」
「いや、そりゃいいだろ!ってか、コレ小説なの!喋ってくれねぇといるのかいないのかわかんねぇから!」
「さっきから、四人四人いってるのに、あたしらしか喋ってなかったからねー」
 あははと笑う千枝を余所に、その青年は驚いたような顔をしていた。
「だって今まで、「ペルソナ!」とか「うん」とかしか喋れなかったし……」
「なに言ってんだよ!ドラマCDではちゃんと俺らと会話してただろ?」
「でも、なんか俺だけ省エネだったじゃん」
「ったく、そんなことでどうすんだよ。アニメだぞ、おまえが主役だぞ。それでも喋らない気か?」
「そうだよな……俺、しっかり喋らないとな!」
「でも、一つ聞いていい?」
 青年がやる気に満ち溢れて目を輝かせると、雪子がそう切り出した。
「わたしたち、あなたのことなんて呼んだらいいの?やっぱり鳴上くん?それとも悠くん?」
「そういやそうだな……えっと、番長って選択肢もあると思うが」
「そうだな……」

 ・名字で呼ばせる。
 ・名前で呼ばせる。
 ・番長と呼ばせる。


「いや、そんなところで選択肢出さなくていいから!」
 青年こと番長、もとい鳴上悠はそうツッコんだ。そして少し考えた後、
「いつもどおりでいいよ」
 と、答える。
 だが、その答えを聞いて悩んだのは他のメンバーだった。
「いつもどおりっていうと……「おまえ」か「相棒」だな」
「わたしは「あなた」かな」
「うーんと、「キミ」って呼んでたよね、たしか」
「えっと、そうなるね……」
 改めて考えると、どれも余所余所しいものばかりだ。
 ちなみに、ここにいない他のメンバーも、「センセイ」「先輩」「先輩」「あなた」「お兄ちゃん」「おい、おまえ」「堂島さんとこの」と、どれも抽象的だった。
「なんだか、悲しくなってきた……」
「仕方ねぇだろ!固まった名前なかったんだから!漫画版でやっとついたけど、今回それと違うしさ」
「そうそう!それに、最後の方ではちゃんと名前で呼んでたって!……音声無いけど」
「じゃあ、いっそ番長って呼んでくれ」
「そんな吹っ切れ方するなって……そうだ!それにしてもさ、俺ら人気出るかなー?」
 番長が暗くなってきてしまったので、大急ぎで話をすり替える陽介。ただ、それは実際彼らが皆抱えている悩みだった。そのため、かなり無理やりな話題変更だったが、すんなりと話は溶け込んでいった。
「そうだよねー。あたしの友達なんか、「4ってことは続編でしょ?前の見てないからいいやー」だって」
「確かにそう思っちゃうよね……あと、シリアスものが苦手な人とか……」
「シリアスねぇ~“あの天城”とか“あの完二”を見てシリアスって言えるのか?」
「花村くん、それ以上言うと……」
「わかった、わかった!天城さん目が恐えぇよ……」
「でも、ある意味あれはシリアスだったよね……」
「もう、千枝までー!」
「でも、こっちは忘れたい記憶までひっくり返してアニメ化するわけじゃん。それならやっぱ人気出てほしいよなー」
「そうだよねー」
「うん……」
「「「…………」」」
 そこまで話して、ふと三人は同じことを思って一人の方向を向く。
「……うん?」
「いや、うん?じゃねぇよ!だから喋れって!」
 あまりに悠が喋らないので、陽介が半分キレてそう叫ぶ。
「だって、なんか三人が楽しく喋ってると入りにくくてさ」
「おまえは人見知りの小学生か!」
「ぷっ……くくく……」
「天城、笑ってる場合じゃねぇぞ」
「ごめん、でも……くくく……」
 なにがツボに入ったのか、笑いながら突っ伏した雪子を無視して陽介は話を続ける。
「いいか?さっきも言ったがおまえは俺らのリーダーであり、主人公だ。おまえがしっかりと先頭切ってくれないと、俺らも続けないんだよ。わかったか?」
「ああ、それはわかってるつもりなんだけど……自分でもどうやって会話に入っていいかわからなくて……」
「おまえ、なんでそれでモテるんだろうな……?」
「聞き上手なんじゃないかな?」
「くっくく……お腹苦しい……」
 やっかみも込めた陽介の言葉に悠がそう返し、雪子がされに崩れ落ちる。
「ったく、もういいよ。放送ではしっかりやってくれよ」
「うん」
 やっぱりそれしか言わないのかと思いながら、陽介はもう一度話題を変えることにした。
「それよかおまえ、アニメでは何股もかけるんじゃねぇぞ」
「え?」
 だが、その陽介が発したその言葉は完全に地雷だった。
「そうだよキミ……」
「ちゃんと分かってるよね……?」
 さっきまで笑顔だった千枝と雪子の顔がみるみるうちに険しくなっていく。その二人に怖気づきながらも、悠はなんとか言葉を口から絞り出した。
「えっと……なんのこと?」
「あっそう、とぼけるんだ」
「ケジメつけてくれるんだよねって聞いてるんだけど」
「あの、二人ともシャドウより怖いから……」
「それってつまり、あたしら以外の子ってこと?」
「そう……鳴上くんのこと、信じてたんだけどな……」
「いや、そうじゃなくって……もう、陽介からもなんか言ってくれよ」
 悠は助け舟を求めて、横に座る相棒、陽介に話を振った。だが、
「……世の中クソだな」
「陽介、違うキャラになってるぞ!」
 暗いオーラを漂わせて、陽介は誰かのようにブツブツとなにかを呟いていた。マガツジライヤでも召喚できそうな雰囲気である。
「ああもう!ほら、今日はこれから放送開始記念パーティーの買い物行こうぜ!ここは俺が奢るからさ」
 悠はそう言うと、誰の返答も聞かずに立ち上がった。
「すいません、お会計お願いします!」
「はい!コーヒー四つですね」
 ウェイトレスを呼ぶと、さっきと同じ小っちゃいポニテの女の子がやってきて伝票を確認した。
「偉いねー……そうだ、お菓子あげようか」
 悠がお金を準備している間、千枝がそう言って鞄の中から肉ガムを取り出して一枚小っちゃい女の子にわたした。
「えっと、わたし小学生とかじゃないですよ!」
「いいからいいから」
 返そうとする小っちゃい女の子に無理やり肉ガムを握らせ、千枝は先に店を出て行った。
「千枝、待ってよ」
「おい、おいてくなって」
「お、おい……」
 誰も俺の奢りを断らないんだと悲しくなりつつも、悠も会計を済ませて三人に続いたのだった。
「はぁ~……俺、やっていけるのかな……?」
 そんな呟きは、きっと誰にも聞こえなかったことだろう。



†カウンタートーク(3):未来日記所有者†

「えへへ~、お客さんにガム貰っちゃった~」
 テーブルで代金を受け取ったぽぷらは、嬉しそうにしながらカウンターに戻ってきた。
「肉ガムって貰って嬉しいものなのか?」
「どうだろうね。でも、食べたことないからちょっと気になるかも」
「そ、そうか……」
 ひびきの考えに若干ついていけない千鍵だったが、別に自分が受け取ったわけでもないし、本人が喜んでいるので良しとした。
「あの~千鍵さん」
「ん?」
 するとそんな時、ゴミ出しに行っていたまひるが戻ってきた。
「これが、お店の前に落ちていたんですけど……」
 そう言って彼女が差し出したのは、靴跡がついた青い携帯電話だった。
「あーそれは捨てといてよかったのに……」
「そんな酷い!ケータイショック!」
「キャッ!喋った!」
 突然喋り出したケータイに驚いたまひるは、ケータイもといケータイさんを放り投げた。
「ふんっ」
「ぎゃほっ!」
 床に転げたケータイさんを踏みつける千鍵。ケータイさんはみしっと音をたててテンキーにひびが入ったが、なぜか嬉しそうに輝いていた。
「あっ、すいませんあたし……」
「いやいいんだ。コイツはこうしても何故か無事だから」
「むしろありがとうございますと言いたいところですね!」
 千鍵の言葉通り、独りでに立ち上がったケータイさんはピョンピョンと跳ねまわりながらそう言う。その姿に、まひるもぽぷらも引いていた。
「自己紹介が遅れました、可愛い御嬢さん方。私は華麗なる……」
「ケータイだ」
「ちょっと千鍵さん!人の自己紹介タイムを取らないで下さいよ!」
「そもそも人じゃないだろ」
「えっと……けっきょくなんなんですか?」
「ケータイだ」
「ケータイです」
 まひるの疑問に同時にそう答える一人と一台。まひるとぽぷらの疑問は解けていないのだが、知らないままでいた方がよさそうだと思い、二人ともそれ以上追及するのを止めた。
「そういえば、伊波ちゃんは男性恐怖症だけど、ケータイさんは大丈夫なの?」
「え……?だって、ケータイですし」
 ひびきの問いにそう答えるまひる。
「私としては、ボコデレの伊波さんに殴って頂いても大いに嬉しいのですが!」
「じゃあ、あたしが思う存分殴ってやろうか?」
「ひぃ!千鍵さん、拳を収めて!今日だって出番ないかと思ったんですから、これ以上出番減らさないでー!」
「そういえば、今までなにやってたの?」
 未だ拳を振り上げている千鍵の横でひびきがそう問うた。
「ハイ!私、セイバーさんに店先で踏まれた後、つい先ほどまで今期一のヤンデレヒロインの方と一緒におりまして」
「ヤンデレヒロイン?」
「ええ!なんとその方の作品では私ケータイも大活躍!その名も「未来日記」」
「未来日記ってあれだよね?ケータイの日記に先のことが書いてある」
「そう!まさにソレ!そして私も、その未来日記の能力を持ったケータイだったのです!」
「あっそう」
 大業に言ったケータイさんを余所に、どうでもよさそうに千鍵は答えて仕事に戻ろうとした。
「待ってください!ホントなんでんすから!」
「いや、それがホントだったとしてもどうでもいいから」
「何をおっしゃる!私の能力を使えば、「未来日記」の世界ならば間違いなく神になれるのですYO!」
「ってか、おまえにそんな能力あるわけないだろ?」
「だからあるんですって!「未来日記」の世界の全てを予知する能力が!」
「な、なんだってー!」
「いや、ひびき……そこ乗っからなくていいから」
「あっそう?」
 えへへと笑うひびきは、千鍵の言葉を聞いてないようだ。
 とりあえずオチをつけないと終わりそうもないので、千鍵はケータイさんに話の先を促す。
「で、具体的にはどんな能力なんだよ?」
「ですから、「未来日記」の世界なら、次の瞬間に起こること全てを言い当てることができるのです!」
「なんでそんなこと言い切れるんだよ?」
「それはもちろん、私がモザイクやパラドックスどころか、寓話に至るまで全巻読んでいるからに決まっているでしょう!」
「はっ……?」
「ちなみに全巻初版で持っておりますYO!」
「そんなのこと……知ったことかぁ!」
 千鍵は思っていた以上の酷いオチに、ケータイさんを両手で握りしめると、力一杯本来曲がる方向とは逆に折り曲げる。
「HI・DE・BU!」
 悲鳴らしきものを上げ、ケータイさんはうんともすんとも言わなくなった。
「あー伊波さん、悪いんだけどこれ捨てといて」
「は、はい……」
 千鍵から真っ二つになったケータイを受け取ったまひるは、この人たちとは深く付き合わないようにしようと心から決めるのだった。



†3番テーブル:隣人部†

「なんだか、凄い店に入っちゃったな~」
 羽瀬川小鷹はそうボヤキながら体を小さくしてコーヒーをすする。
 さっきから店員が客の青年を殴ったり、小学生みたいな子が働いていたり、カウンターでケータイをへし折ったりと、とても普通の喫茶店とは思えない光景が目の前で繰り広げられていた。
 だが小鷹は知らない。これでも、この店では遥かにマシな日であることを。
「はぁ~そんなことを言っているから小鷹は駄目なんだ……」
 と、ビビりながらコーヒーを飲む小鷹の正面に座っていた三日月夜空がそう言った。
「どういう意味だよ?」
「ここにいるのは全てアニメ化するほどの人気作の登場人物たちだ。中には二期を迎える作品まである」
「わー大分ぶっちゃけてるけど、まあそうだよな……」
 一応自分たちもそこに分類されるのではないだろうか、などと考えながらも小鷹は夜空が続きを話すのを待つ。
「そして、だ。人気作の主人公たちには、必ず仲間や友達がいる!」
「だから?」
「まだわからないのか。つまり、彼らを見習えば私たちにも友達ができるというわけだ!」
 なるほど。いつもどおり理にかなっているようでかなっていない夜空の推論だった。
「じゃあなにか?今日ここに来たのは、その登場人物たちをウォッチングするためってことか?」
「まあ、そうなるな」
「でもさ……」
 そう言って小鷹はもう一度店内を見回す。
「一人は出番がないって嘆く元主人公と、台詞と名前がない主人公。それにあとは、小っちゃい店員と男を殴る店員しかいないぞ?」
「それがどうした?」
「いや、どうしたって、そりゃ……あれを見てどこを見習えばいいんだよ?」
 小鷹にはそれがまったく分からなかった。もしかしたら、今の自分の方がはるかにマシな気さえしてくる。
「それはアレだ……この作者のせいだ!」
「またぶっちゃけんな!まあ、間違ってないけどさ……」
 と、そんな話をしている時、
「お待たせー!」
 と、金髪碧眼の女の子が小鷹達の座る席にやってきた。
「遅いぞ、肉。遅刻した罰として、学校の敷地の四分の三を私に寄こせ」
 肉、もとい柏崎星奈は夜空にそう言われながらも、その夜空の横に腰を落としながら、
「はぁ?誰があんたなんかに渡すもんですか!」
 などと反論する。
「いや、そもそも学校の敷地っておまえのじゃなくて親のだろ?」
「いずれはあたしの物になるんだから同じでしょ?」
 小鷹の言葉にもこの調子である。
「それよりも……この店凄くない!?」
「ん?なにがだ?」
 確かに凄いといえば諸々凄いおかしいのだが、そのどれかが分からずに小鷹は星奈に聞き返す。
「だって、カウンターにいるのって「WORKING!!」の種島ぽぷらちゃんに伊波まひるちゃんでしょ!?それにあっちには「Fate」のセイバー!それにそれに、向こうには「ペルソナ4」の里中千枝ちゃんに天城雪子ちゃん!もう、夢みたい!」
「「…………」」
 頬を赤らめてそう早口に言う星奈に、小鷹と夜空は正直引いていた。ついにここまで来てしまったかと。
「それでそれで!?今日はこの喫茶店でなにするの?」
 一人テンション高くそう夜空に聞く星奈。それを鬱陶しそうに払いながら、夜空はことの説明を話した。
「……と、いうわけだ」
「なるほどね!あたしも、珍しく名案だと思うわ!」
 そうなふうに強気に言う星奈だったが、さっきから真っ赤になって、さらに鼻息が荒くなっている。
「でもでも、見てるだけなんてモッタイナ……勉強にならないから、どうせならあの人たちと一緒になにかやらない?」
「なにかってなんだ?」
 小鷹がそう星奈に聞くと、星奈は得意げに鞄の中からトランプを取り出した。
「もちろん、大富豪しかないでしょ!」
「却下」
 だが、星奈が言った途端、間髪入れずに夜空が言い放った。
「えーなんでよ!?」
「理由はただ一つ……小鷹もわかっているな?」
「ああ、それだけは今やるわけにはいかないからな……」
「な、なんで……?」
 なぜか神妙な顔つきの二人に気圧されて、星奈はそう問う。すると小鷹がおもむろに口を開いた。
「それは……うっちーがいないからに決まってるだろ!」
「……はぁっ?」
「どうせ大富豪やるなら、うっちーがいる時にやりたいじゃんか!」
「そういうわけで、大富豪は却下だ」
「そんなー!」
 納得のいかない星奈は立ち上がって店内を見回した。
「でも、彼なら同じく今期アニメの「君と僕。」の主人公なんだから、ここにいてもおかしくないはず……」
「いや、残念だがうっちー、もとい浅羽悠太なる人物がこの場に現れることはない……」
「そんな、なんで?」
「なぜなら、この作者が「君と僕。」を読んでいないからだ!」
「そ、そんな理由で……」
 足から力が抜け、椅子にへたり込む星奈。
「あ~あ、またぶっちゃけたことを……」
 その様子を見ながら小鷹はそうボソッと呟いた。
「読んでいれば、きっとここで大富豪ができたことだろうな……私も残念だ……」
 夜空は悲しそうに嘆息すると、窓の外を眺める。
 そしてそれから数分の間、誰も一言も発することなく、時間だけが過ぎていく。
「……で、これからどうすんだ?」
 それを見かねて、小鷹が絞り出したようにそう聞く。
「そうだな……やはり、ここにいる人間に限らず、人気作の登場人物を参考にするというのは大事だと思うのだが……」
「たとえば?」
「うむ……小鷹、今度、指鉄砲でミサイルを六十発撃ち落とせ」
「無茶言うなよ!ってか、それ少し内容変わってんじゃねぇか!」
「では、所構わず「結婚してやんよ!」とプロポーズしまくれ」
「それはもうただの変態だ!」
「それなら、カカシを連れて歩くというのは……?」
「カラスどころか人すら寄り付かねぇよ」
「なら妹にペンギンの帽子をかぶせろ!」
「もう俺関係ないのか!ってか、うちの妹は頭の構造は少々おかしいが至って健康体だ!」
「そうか……」
 どうやら夜空の安は全滅したらしい。
「ねぇ思うんだけどさ……」
 そこで今まで黙っていた星奈が唐突に話に加わってきた。
「なんだ、肉?」
「誰が肉よ!……ふぅ~だから、どんなに人気作の人気キャラの真似をしたって、あたしらの世界でそれをやったら、「あ~痛い人だ」で終わっちゃうんじゃない?」
「「…………」」
 星奈の言葉に、確かにそうかもしれないと納得する二人であった。小鷹に至っては、自らの妹の姿さえ頭に浮かんだ。確かにあれは痛いと。
「じゃあ、この話し合いは無意味だった、ってことか?」
「そ、そうでもない……」
 夜空は強がるようにそう言うと、
「アニメキャラの真似などしても、現実では痛いだけで友達などできないとよくわかったではないか!」
 と、椅子から立ちあがって高らかに叫んだ。
「まあ、それはある意味最初から分かってたことではあるけどな……」
「うるさいぞ小鷹!……ほら、おまえらいつまで座っている!さっさと帰るぞ」
「え?でも、あたしまだ何も頼んでないし……」
「フンッ。店に入ってすぐに頼まないおまえが悪いんだ」
「なによっ!遅刻したんだから仕方ないじゃない!」
「遅刻したのを棚に上げるな、この肉!」
「おまえら、店の中で喧嘩すんなよ。他のお客さんに迷惑だろ……」
「「フンッ」」
 お互いそっぽを向く夜空と星奈の間に入って、なぜか流れで夜空の分のコーヒーまで奢ることになった小鷹。
 ふと、店を出る前に店内をもう一度見回してみると、そこにはいろんな顔をしたいろんな変わった人たちがそれぞれテーブルを囲んでいた。
 中には喧嘩をするグループもいれば、笑いあっているグループもいる。でも、そのどれもが楽しそうに小鷹には見えた。
「俺にもいつかああやって、喧嘩したり笑いあったりできる友達ができるのかな……?」
 気づくと、小鷹はそんなふうに呟いていた。
「なにをやっているんだ、小鷹」
「あんまり遅いと置いていくわよ!」
「おう、わりぃ」
 店の外からそう二人に呼ばれ、小鷹は笑顔で店を後にした。



†カウンタートーク(4):閉店†

「ふぅ~……今日もなにごともなく終わった~」
 日も暮れた頃、店の看板をしまってから千鍵は大きく伸びをしてそう言った。
「二人もご苦労さま~」
 ひびきはカウンターから、今日だけの臨時ウェイトレス二人に笑顔でお礼を言う。
「いえいえ、こっちも楽しかったですよ!ねっ、伊波ちゃん?」
「は、はい。なんだかとても貴重な体験をさせてもらった気がします!」
「えへへ~そんなこともないよ~」
「なんでひびきが嬉しそうにするんだよ?まあ、ホントお疲れさん。二人はもう上がっていいぞ」
「それじゃあ、お言葉に甘えて……」
「お先に失礼します」
 そう言ってぽぷらとまひるはカウンターを出て店の奥に入って行った。
「いや~しかし、よくこの店のバイトが務まったな……」
「うん!あの二人、並大抵のウェイトレスさんじゃないね!サーヴァント並のウェイトレスさんだよ!」
「それはどうなんだろうな……?でも、さすがアニメ二期が放送されるだけはあるな……」
「それよりチカちゃん?」
「ん?」
 そこでひびきは今日一日謎だったことを千鍵に尋ねた。
「なんでわたしたち、アニメ化もしないのにここにいるの?」
「さぁ?なんでだろうな」
 だが、ひびきの問いに答えることが千鍵にはできなかった。それでも一つ言えることがあるとすれば、
「作者の趣味じゃないか?」
 それだけだった。
「なるほど!」
 そして、その言葉にひびきも納得したようだった。
「わたしたちもいつかアニメ化される日がくるかな~?」
「どうだろうな?」
 千鍵はそこまで言うと一旦言葉を切り、窓の外に広がる真っ黒な夜空を眺めて続ける。
「でも……あたしらはどんな客が来たって、この店がただ居心地のいい空間になってもらえるように接客するだけだ」
「うん!そうだね!」
 千鍵の言葉にひびきが笑顔で答え、横にテッテと駆け寄ってくる。
 そして横に並ぶと、千鍵の顔を見てまたえへへと笑う。
「なんだ?気持ち悪いな?」
「ううん……ただ、ずっとチカちゃんの横でこうしていたいなって」
「なっ、急になに言ってんだ、おまえ!」
 千鍵はそんなひびきの言葉に真っ赤になりながら、ひびきの頬をギューとつまんだ。
「ひたいよ~(痛いよ~)」
「急に変なこと言った罰だ……ほら、とっとと後片付けしてあたしらも帰ろう」
「うん!」
 そう言って二人は、残った仕事を片付けて今日も店を後にする。
 それにより、この奇妙な邂逅の場もまたお開きとなる。またいつこの奇跡が起こるかは誰にも分からないが、もしかすると次はあなたの街に突如としてこの店は現れるかもしれない。
 そんな摩訶不思議な奇跡を起こす店。その店の名は、――アーネンエルベという。


「なんかいい感じに終わらそうとしてますけど、内容はメッタメタでしたけどNE!」
「うるさいな!いいんだよ、終わりよければ!」
「それでは、作者もいろいろと反省していますので、許してあげてくださいね~」
「暇ならおまけも読んでいけよ~」

 ――おわり




†おまけ:かるた部?†


 その日、アーネンエルベの店内はどこか様子がおかしかった。
 いつものテーブルや椅子がどかされ、その代りに畳が敷かれていたのだ。そして、その畳の中心で、日比乃ひびきはマイクを手に高らかに叫んだ。
「第一回、前期アニメ百人一首大会~!」
 その声に、周りからワーワーと歓声が巻き起こる。
「なぁ、ひびき……これはいったいなんの茶番だ?」
 その様子を訝しげに見つめながら、桂木千鍵はそうひびきに問うた。
「なに言ってるの、千鍵ちゃん。これは栄えある大会なんだよ」
「いや、知らないけどさ……ってか、なんで前期なんだよ。それなら今期のアニメにすればいいだろ」
「それはネタ的な問題ですから!」
 千鍵がめんどくさそうに言っていると、青いケータイさんが割って入ってきた。
「ネタとか言うなよ!」
「だって事実ですしね!」
「そりゃそうかもしれんが……」
「ちなみに、この大会のMCは本来タイガー道場の二人がやる予定だったけど、ネタ振りをすっかり忘れて、けっきょくわたし、日比乃ひびきがやってまーす!」
 千鍵が言い終わる前に、ひびきは再度マイクを手にそう名乗った。
「書き終ってから思い出したんだから仕方ないですよね!」
「そっか、それであの二人裏でスタンバってたのか……ついてない二人だな~」
「それでは、この大会第一回に名乗りを上げた出場選手を紹介しましょー!」
 あらためてそうマイクに叫んだひびきは、続いて出場選手を読み上げた。
「エントリーナンバー1、ほ……ほう……ほうおう?……岡部倫太郎さん!」
「こら貴様!この俺は狂気のマッドサイエンティスト鳳凰院凶真だ!」
 白衣を翻しながら痛いポーズをとった男が畳の上に上がり、そう叫んだ。千鍵はなんのことかさっぱり分からなかったが、係り合いになりたくなかったので無視することにした。
「続いての出場選手は、エントリーナンバー6、ネズミさん!」
「フンッ……なんで俺がこんなものに……」
 そう小さく呟きながら、仏頂面の長髪イケメンが畳の上に上がった。
「おい、なんで1から急に6に飛んだんだ?」
「それは元ネタ的なネタです!」
「あぁそうかよ……」
 ケータイさんにそう言われたとたん、もうなんか気にするだけ無駄な気がした千鍵だった。
「そして出場選手は……以上お二人だけでした!」
「って、二人だけかよ!それ大会って言うのか!?」
「まあ、競技かるたは基本二人でやるものですからね!」
「だからってそれでいいのか……?」
「いいんデス!」
「…………」
 呆れかえりつつも、千鍵はなにも言いかえさなかった。言い返したところで、どうせ意味がないことくらいはもう理解したのだ。
「それでは早速お二人には戦って頂きましょう!」
「フゥーハハハハ!このIQ180を誇る狂気のマッドサイエンティストが、げっ歯目真鼠亜目ネズミ亜科の小動物に負けるわけがない!たとえそれが、かるたでもだ」
「ほう、言ったな……地獄を見るのはあんたの方だぜ。今のうちに予習でもしておくんだな、オッサン」
「おおっと、既に二人は緊迫状態!では、競技かるた、レディ……Go!!」
「いや、かるたってそうやって始めるものじゃないだろ!」
 千鍵のツッコミは流され、場が静寂に包まれる。
(これだとあたしがすべったみたいじゃん!)
 序歌が詠まれる中、千鍵はそう心の中で再度ツッコむのだった。


「試合風景は割愛して……結果発表~!」
 ひびきが最初のようにマイクを持ってそう高らかに叫ぶと、また辺りから歓声が上がる。
「手に汗握る激戦に次ぐ激戦。その結果はなんと……0対25で、ネズミさんの圧勝でした~!」
「いや、どこが激戦だよ!」
 一枚も取れないとか弱すぎだろと、叫ぶ千鍵。それに対しケータイさんは、
「勝負は結果じゃない……どれだけ熱い戦いをしたかったことなんですよ!」
 と、恐らくキメ顔で言った。なにしろケータイなので表情は分からないが。
「いや、わたしずっと見てたけど、岡部とかいうの構えたままピクリとも動かずに試合終わってたぞ!」
「これが運命石の扉(シュタインズゲート)の選択だとでもいうのか……」
 岡部は畳に両手を着き、orzこんな感じになって呟いていた。
「ってか、下の句一個も覚えてなかっただけだろ!?」
「なにおう!学生時代に習った何個かは覚えていたさ!だが、それを思い出すよりも早く向こうが動くのだ。勝ち目があるわけないじゃないか!」
「コイツ、開き直りやがった……」
 鬱陶しいという思いをこめて岡部を睨む千鍵。
「なんであれ、俺の勝ちは勝ちだ。悪く思うなよ、痛いオッサン」
「くっ……俺はこれで失礼する!だが、次会う時は必ずリベンジマッチをしてやるからな!覚えておけ!エル・プサイ・コングルゥ」
「ああ、あんたが忘れてなければな」
 岡部はネズミに言い返すこともなく、謎の言葉を残して去っていった。
 その様子を見届けてから、再度マイクを握るひびき。
「さぁ、こんな二人の異種かるたがまだ見たいって?そんなあなたは、もうすぐ始まる少女漫画?いいや、熱いスポーツ漫画な「ちはやふる」を見よう!」
「ああ、それがやりたかったのか……ってか、あの二人は出ないだろ!」
「中の人ネタですYO!」
「それはわかってる!」
「それでは、ここまで諸々の茶番にお付き合いありがとうございました~!次は、第二回前期アニメ百人一首大会でお会いしましょう~」
「もうやらんわー!」
 そんなこんなで、今日もアーネンエルベは賑やかに幕を下ろすのだった。



  お わ り

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